「にほんばし人形町 新編」、「東京を江戸の古地図で歩く本」、「江戸東京《奇想》徘徊記」
表題の3冊は、 いずれも9月に入ってすぐに購入した本です。
「にほんばし人形町 新編」 は、 人形町商店街協同組合 「にほんばし人形町」新編出版部の編集で、 平成14年7月22日に初版発行。
こちらは、 私が現在住んでいる「日本橋人形町」の 江戸時代から続く歴史や文化が詳しく書かれていおり、 ビジュアル面も充実していて、 大変面白い本でした。
内容は、
「第一章 江戸からはじまる人形町」
(江戸に生まれた文化と商業の街・人形町、江戸期のあゆみ、江戸歌舞伎と堺町・葦屋町、この地にはじまった吉原)
「第二章 人形町商店街の変遷史」
(人形町と最後の花電車、座談会 女性が語る人形町、江戸時代から続いている老舗の紹介等々)
「第三章 芸能と文化を大切にする人形町」
(芸能が遺した“下町の粋”、人形町寄席、美しかった大川の残した文芸と文士たち)
「第四章 奇跡的に残った人形町」
(人形町罹災記)
「第五章 訪ねたい名所めぐり」
(“下町の劇場”明治座、安産祈願の水天宮、人形町界隈の橋めぐり、隅田川情緒の移り変わり、庶民から愛される浜町公園)
付録の人形町史年表や、編集後記を含めて全221ページ。
内容が充実していて分厚く、値段もそれなり¥3,500 なんですが、 住んでいる町を深く知り、 江戸時代の様子を思い浮かべ、思いを馳せるのは大変楽しいものです。
ビジュアル面では、 江戸名所図の 「元吉原」 (江戸時代、人形町あった吉原遊郭は、明暦の大火 (1657年) で焼失。 以後、吉原遊郭は浅草に移転(新吉原)) 、その「大門通」の賑わい、「江戸歌舞伎」、「日本橋魚市」、「鎧の渡し」(現在の鎧橋がかかる前の渡し舟) をはじめとするたくさんの浮世絵や地図。
現在はビルになってしまいましたが、 「明治座」の明治2年のこけら落としの写真、「芳町踊り」の写真、 人形町の交差点近くにあった寄席 「末広亭」 の写真、 関東大震災直後、 瓦礫で覆われた人形町通りの写真、 昭和20年3月10日の東京大空襲で一面焦土と化した、日本橋浜町、久松町、蛎殻町、人形町界隈の様子 (大空襲を辛うじてまぬがれた人形町の一角だけは、そのまま終戦を迎えたそうです) 等等。 とても見応えがありました。
なお、人形町商店街協同組合のサイトの中にある 「わが町人形町」 のページも、 「第一話 江戸の城(しろ)下(した)町づくり」、「第二話 商業の街・日本橋」、「第三話 人形町の名前の由来」、「第四話 江戸から明治へ、人形町の繁栄」、「第五話 江戸の歌舞伎街・人形町」、「第六話 二町四方の一大遊郭・吉原」、「第七話 粋でおきゃんな芳町心意」(心意気?) が書かれてあって、 こちらは本のダイジェスト版のような感じですが、もちろん本の内容には及ぶべくもなし。 でも、よくまとめられていて面白く読めました。
*畠中恵の「しゃばけ」「ぬしさまへ」 も、最近とても夢中になった本。
「東京を江戸の古地図で歩く本」(ロム・インターナショナル編、 KAWADE夢文庫 (河出書房新社))は、
副題に「“華のお江戸”がよみがえる歴史めぐり」、「江戸の刑場が人通りの多い場所につくられたのはなぜ?」 とあるように、 江戸古地図と現在の地図を対比しながら、 江戸の当時の様子が詳しく書かれている、 歴史散歩の本。
ちなみにこの本によれば、 江戸時代の地図のほとんどは西が上。 江戸城(現在の皇居)が上で、 その城下町として整備されていった「城の下の町(=本来の下町)」である 日本橋、銀座などはその下に描かれていることがほとんどだそうです。
江戸末期に観光された尾張屋清七版の切絵図がふんだんに掲載されていて、 かつての江戸の街並と現在の東京のようすが一目でわかるようになっていて、 私が持っている 「江戸明治東京重ね地図」 (DVD & 検索データブック) と合わせて使うと、 夢中になって時間を忘れてしまうほど。
町の細かいエピソードが満載で読み応えがありました。
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「江戸東京《奇想》徘徊記」(種村季弘著、朝日文庫)は、 「当代きっての博覧強記にして粋人である種村季弘をガイドに、 厳選された東京の裏町30を闊歩」(本の裏の解説を引用)する本。
著者の種村季弘氏の博覧強記の度合いが並外れていて、 こんなに面白い江戸東京散歩の本は滅多にないかもしれません。
「人形町路地漫歩」 の頁には、 明治2年まで日本橋人形町には貨幣鋳造所である「銀座」 があったりしたこととか、 人形町にあった元吉原の詳しい由緒、 永井荷風『日和下駄』第七「路地」に出てくる葦町(芳町)の古風な路地にも言及する等々、 人形町一つとっても、 こんなにディープな町だったとは!! と感嘆しきり。
「永代橋と深川八幡」 の頁には、 三遊亭円朝をひいきにしていた豪商、飯島喜左衛門の次男、弁次郎が 「怪談牡丹灯篭」 のモデル説まで詳しく書かれているほど。
「根津権現裏と谷中」 の頁では、 「上海楼」や、 団子坂を通って永井荷風が森鴎外の観潮楼を訪ねたときの様子なども詳しく描かれ、 これを読んでから、また谷中散歩・自転車ポタに行ってみたくなりました。
*以前書いた、江戸古地図関係の本のエントリー
■「「江戸明治東京重ね地図」 (DVD & 検索データブック)」 のエントリー
現代・明治・江戸の重ね地図で、 見やすく拡大・縮小表示できる
APPカンパニー の 「江戸明治東京重ね地図」 DVD-ROMが搭載・接続されているパソコンで使用できるDVDソフト。
(詳しい内容は 「こちら」 )
■「江戸東京散歩 切絵図・現代図で歩く もち歩き地図」 のエントリー
■「池波正太郎 「男の作法」、「江戸切絵図散歩」」 のエントリー
*備忘録メモ
江戸城天守閣は、 三代家光の代に江戸幕府の権威を象徴する国内で最も大きな天守閣が完成するも (外観5層、内部6階、地上からの高さ58メートル)、 それからわずか19年後の1657年、 明暦の大火 (振り袖火事)で、飛び火により全焼。 以後は再建されなかったそうです。
解説つきの案内板の画像は、こちら。
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コメント
おもしろそうな本があるんですね。私も読んでみます。
先日、私も「しゃばけ」を買いました。まだ読んでませんが。
最近読んだ本で面白かったのは、「日本人の忘れもの」(中西進著)「イントゥルーダー」(高嶋哲夫著)でした。機会があればお読みください。
投稿: oishi--i | 2006.09.09 23:14
しゃばけ、いかがでしたか? 私は、若だんなが、京橋近くのお店から、神田明神まで歩いていくところなんかを想像すると面白かったです。
読みたい本が多すぎて、なかなかおすすめに行き着きません(^_^;)。
投稿: きのこ | 2006.09.13 01:52