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「神饌 - 神様の食事から“食の原点”を見つめる」 南里空海 著  

この 「 神饌 ― 神様の食事から“食の原点”を見つめる」 の著者の南里空海 (なんりくみ)さんは、私のヨガのつながりの方。 お話を伺う機会に恵まれ、縁あって、この本を贈っていただきました。
下の写真右のこの本は、「家庭画報」 2010年2月号、4月号、7月号、10月号に掲載されたものに大幅加筆、諏訪神社の項を追加し、単行本化されたものです。
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「神饌 (しんせん)」とは、豊かな実り、自然の恩恵に感謝し、神様に差し上げるお食事のこと。 この神饌のお下がり、もしくは同じものを共にいただく 「直会 (なおらい)」は、「神と人との一体感を保つ」ものとされています。
神社に参拝した後にいただく、お米が材料とする 「お神酒 (おみき)」にその一つ。

本にも書かれていますが、「神」や「神社」というと、特定のイデオロギーや宗教にかかわるものと、ちょっと引いてしまわれる方がいらっしゃるかもしれませんが、「大いなるもの」に対して祈る行為は、きわめて普遍的なことですね。

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伊勢神宮に関しては、以前執筆された 「 伊勢の神宮―祈りの心・祭りの日々 日本人の原点回帰を求めて 」 が非常に詳しく、北白川大宮司へのインタビュー、神饌を作る現場の取材もあり、ビジュアルも充実して読み応えがありましたが、今回の「神饌」では、この伊勢神宮をはじめ、18の神社の神饌の特別公開。

日本の食文化と「食」の歴史といえる 「神饌」。 そのうちの、煮炊き、調理された 「熟饌」 あるいは 「特殊神饌」を献供している日本各地18社を実際に訪れ、その神事、神饌に関わる人々にも数々のインタビューをされ、とても丹念な取材をされていました。

「直会」、「神仏習合」などの解説もあり、単なる資料としてだけでなく、読み物としても、かなり読み応えがありました。

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この神饌は、その多くが非公開とされ、その取材、写真撮影には困難をきわめたとのこと。

それだけに、外からは伺い知ることができない、特別公開された神饌の数々が紹介されているこの本は、かなり貴重な文献といえるでしょう。

そして、こんなにさまざまな種類のお食事、地域によっても違うものが供されてきたとは。 しかも、伊勢神宮では、古来より朝・夕毎日、調理されたお食事が神様に供されていたとは、まったく、驚かずにはいられませんでした。

また、神饌を脈々と作り続け、これを伝えてきた人々、各地によって違う食文化、歴史にも、とても興味をひかれました。

「食の原点」は、豊かな実り、自然の恵みに感謝し、美味しく食べていただきたいという真心と、 それを共にいただくという気持ちに重点があるのでは、と思いました。 それこそ、現代の日本に欠けてきているものかも。

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ところで、ビジュアル面では、細部までわかる、あの豪華な月刊誌の大見開きを使った大判の写真にはかなわないものがあったものの、雑誌では小さくしか出ていなかった写真が、より大きく見やすく拡大されていたり、新たに追加された写真もたくさんあって、見応え十分。

もっとも、雑誌に掲載されている写真と本を一緒に見たら、さらに面白かったです。
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ところで、大震災による津波により集落が破壊され、それに伴う福島原発の放射能漏れにより、農耕、牧畜、漁業に甚大な被害が及んでいる危機的状況。 古来より、日本は数々の自然災害にみまわれてきたけれど、今回の 「食」 にまつわる危機、風評を含めた被害はとりわけ深刻なもの。

いにしえより、日本人は神様に祈って豊作豊漁を願ってきたけれど、神様でもどうしようもできない天変地異と人災だったのでしょうか。復興を心よりお祈り致します。


神社本庁
http://www.jinjahoncho.or.jp/

★追記 (2012/3/8)
料理本のアカデミー賞と言われる『グルマン世界料理本大賞で、2012年 日本人2名受賞!!』 Kitchen Life Pub.の記事 http://www.kitchenlife.jp/tomato/?p=1395 によると、
その2名のうちの1名が、南里空海さん!
そのCULINARY HISTORY部門で世界第3位受賞作が、こちらでご紹介させていただいた 南里空海著「神饌 - 神様の食事から“食の原点”を見つめる」(世界文化社)です。おめでとうございます!
これを機に、さらに広く世界中で読まれますよう。 翻訳本の出版も期待しております。

★追記 (2012/5/25)
2012年5月25日、著者の南里空海さんが、財団法人 神道文化会から神道文化功労者として表彰され、授賞式が行われるそうです。 神道文化奨励賞、受賞おめでとうございます!

私は、普段の生活からはうかがい知れない、日本古来の神道という文化を、「神饌」の本を通じて深めることができました。
もっとも、神前に供える「神饌」は、神道という単なる一宗教の枠を超え、自然の恵みに感謝し、「いただきます」「ごちそうさまでした」、という日本の良き習慣につながるもので、それは、「食の原点」として、今また見直されるべきではないかと思いました。


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